日仏が経済安全保障を中核に格上げ ホルムズ危機下で重要鉱物・原子力・供給網強化を具体化

ホルムズ海峡の危機が世界のエネルギー供給を直撃する中、日本とフランスが経済安全保障で連携を一段と深める。4月1日、高市早苗首相とエマニュエル・マクロン大統領は、両国の「特別なパートナーシップ」の中心に経済安全保障を据え、サプライチェーンの強靱化とエネルギー源の多角化に向けた具体策を発表した。首脳会談後には、アニメ愛好家として知られるマクロン氏と高市氏が人気作品『ドラゴンボール』の「かめはめ波」ポーズをとる一幕もあり、関係の温かさを印象づけた。 会談は東京・迎賓館赤坂離宮で行われ、共同声明では経済安全保障を国家および集団防衛の中核要素と位置づけた。高市氏は冒頭、「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は密接に関連している」と述べ、価値観を共有しインド太平洋に領土的プレゼンスを持つフランスを「特別なパートナー」と強調。マクロン氏も、6月のエビアンでの首脳会合へと向かうG7議長国として、日仏の一層の協調を呼びかけた。
今回の合意は、近年で最も深刻なエネルギー供給の混乱が背景にある。イラン、イスラエル、米国が関与する軍事衝突の余波で、世界の原油とLNGの約5分の1が通過するホルムズ海峡は安定した商業動脈として機能不全に陥り、タンカーの航行は脅威と攻撃が続く中でほぼ停滞。ブレント原油価格は急騰し、特にエネルギー依存度の高い日本などで1970年代のオイルショックの記憶がよみがえる状況だ。エネルギーと重要鉱物の大半を輸入に頼る日本にとって構造的な脆弱性が浮き彫りとなる一方、湾岸依存の度合いが相対的に小さいフランスも、戦略的自律性の必要性を再認識する契機となっている。
柱となるのが「日仏重要鉱物ロードマップ」だ。特定国名の明記は避けつつ、供給の集中、輸出管理、経済的威圧のリスクに正面から向き合う内容で、レアアース市場で支配的な供給国への依存が生む脆弱性を意識した文言となっている。現在、中国はレアアースの採掘で約70%、精製で約90%のシェアを占め、産業国は攪乱リスクにさらされている。 ロードマップは理念にとどまらず、具体的な産業協力に踏み込む。フランス南西部で進むレアアース精製計画「Caremag」への支援が要で、日本側からはJOGMEC(Japan Organization for Metals and Energy
Security)と岩谷産業が仏側パートナーと参画している。同施設は2026年末までの稼働開始を見込み、稼働後はジスプロシウムやテルビウムといった重希土類酸化物について、日本の需要の最大2割を供給し得るとされる。これらは電気自動車や風力発電、高度電子機器、防衛システムに用いられる高性能磁石に不可欠な材料だ。 合意にはさらに、第三国での上流鉱山プロジェクトでの協力、リサイクル技術の開発加速、そして資源国をより多様で強靱なエネルギー関連サプライチェーンへ統合することを目指す「RISE(Resilience and Integrated Supply Chains for
Energy)」パートナーシップを通じた連携が盛り込まれた。こうした措置は、単一供給源への過度な依存を減らし、経済的威圧に伴うリスクを緩和することを狙う。両首脳はまた、ホルムズ海峡の航行の自由と、エネルギーや重要資源の安定的なフローの確保の重要性を改めて確認した。協力分野には原子力エネルギーも含まれる。 マクロン氏はG7議長国としての枠組みの下での緊密な調整を呼びかけており、6月のエビアン・サミットが協力の節目となる見通しだ。日仏が掲げたロードマップと各プロジェクトの実行は、エネルギーと重要鉱物をめぐる不確実性が高まる中で、供給網の再設計に向けた具体的な一歩となる。
