MWC 2026の注目トピック「AI-RAN」とは?GPU必須論争の行方

スペイン・バルセロナで3月2日から5日にかけて開催された通信機器展示会「MWC 2026」で、最も熱い議論を呼んだのは「AI-RAN」だった。5Gネットワークの進化とAI技術の急速な普及が重なる中、無線アクセスネットワーク(RAN)にAI機能を統合する動きが加速している。しかし、その具体的な定義や実装方法については、業界内でも見解が分かれているのが現状だ。 RANとは、携帯電話などの端末と通信キャリアのコアネットワークをつなぐ無線基地局周辺のネットワーク部分を指す。4G時代までは専用ハードウェアで構成されていたが、5G時代に入るとソフトウェア定義ネットワーク(SDN)化が進み、汎用プロセッサーを活用した「vRAN」が主流となった。このvRANにAI機能を組み込んだものが「AI-RAN」と呼ばれるが、その定義は驚くほど曖昧だ。 業界団体「AI-RAN
Alliance」は、AI-RANを「AI-on-RAN」「AI-for-RAN」「AI-and-RAN」の3つのユースケースに分類している。例えば「AI-on-RAN」は、RAN上でAIアプリケーションを実行することで、低遅延のリアルタイム処理を可能にする。ソフトバンクがエリクソンのブースで披露したロボット制御のデモは、まさにこの概念を具現化したものだ。ロボット本体に高性能なAIプロセッサーを搭載する代わりに、AI-RAN側で処理を行うことで、コストを抑えながら高度な機能を実現している。
一方で、「AI-for-RAN」はRAN自体の実装にAI技術を活用するアプローチだ。NVIDIAが提唱する「Aerial」は、GPUを使ってレイヤー2のパケット処理を行うことで、従来必要だった専用アクセラレーターを不要にする。さらに「AI-and-RAN」は、通信キャリアがRAN用ハードウェアをクラウドサービスとして他社に提供するビジネスモデルを指す。需要に応じてハードウェアリソースを柔軟にシェアすることで、新たな収益源を生み出す可能性を秘めている。 しかし、AI-RANの実現には大きな論点が残されている。最大の焦点は「GPUが本当に必要か」という点だ。AI-RAN
Allianceの設立メンバーにNVIDIAが名を連ねていることもあり、GPU活用が前提とされる風潮がある。だが、同団体はプロセッサーの種類を限定しておらず、CPUやAIアクセラレーターを組み合わせた実装も否定していない。実際、Qualcommも幹事社として参加しており、MWCでは同社のデモも披露された。 一方で、現在のvRAN市場で圧倒的なシェアを誇るのはIntelだ。同社のブースにはNTTドコモやKDDI、楽天モバイルなど日本の主要キャリアのロゴが並び、Xeonプロセッサーの採用実績が強調されていた。AI-RANの普及が進む中、プロセッサーをめぐる競争は今後さらに激化しそうだ。
AI-RANはまだ黎明期にある技術だが、5Gネットワークの高度化とAIの融合がもたらす可能性は計り知れない。一方で、標準化の遅れやハードウェア要件の不透明さなど、克服すべき課題も山積している。通信業界が描く次世代ネットワークの姿は、AI-RANの行方にかかっていると言えるだろう。
