JERA、9兆円投資で米国シフト LNG調達網の強靭化図る ウクライナ危機の教訓受け

中東情勢の緊迫化により、ホルムズ海峡封鎖の可能性が現実味を帯びる中、日本のエネルギー安全保障は大きな試練に直面している。特に、海外依存度の高い資源小国である日本にとって、安定的なエネルギー調達は喫緊の課題だ。国内最大の発電会社であり、世界最大級のLNG(液化天然ガス)バイヤーであるJERAは、ウクライナ危機での苦い経験を教訓に、LNG調達戦略の再構築を進めている。 2022年2月28日、JERAの可児行夫会長兼グローバル最高経営責任者(CEO)は、自宅で米CNNの放送を視聴していた。米国のトランプ前大統領が登場する中、「真の目的は『体制転換』」という報道に強い危機感を覚えた。中東のエネルギー要衝での情勢悪化は、日本のエネルギー供給に直接的な影響を及ぼす。可児氏は休日ながら、即座に奥田久栄社長兼最高執行責任者(COO)と情報を共有し、現地社員の退避を指示した。
米国とイランの軍事的緊張はエスカレートし、ペルシャ湾岸全域に波及した。イラン側は「一滴の石油も域外に出させない」と宣言し、世界シェア約2割を占めるカタールの国営エネルギー会社「カタール・エナジー」のLNG生産拠点など主要施設を攻撃対象とした。ホルムズ海峡は事実上封鎖状態となり、原油価格は3月9日に一時1バレル110ドルを超え、約3年9カ月ぶりの高値を記録した。国際エネルギー機関(IEA)は11日、加盟国による石油備蓄の協調放出で合意したと発表。2022年のウクライナ危機以来の措置となり、放出量は過去最大規模を計画している。これに先立ち、日本政府は備蓄量の2割に相当する石油の放出を決定した。
日本のエネルギー自給率は2024年度時点で16.4%と、先進国の中でも極めて低い水準にある。特にLNGの安定調達は困難を極める。原油の備蓄が約250日分あるのに対し、気化しやすいLNGは約3週間分しか備蓄されていない。LNG価格は原油価格に連動しており、アジア向けスポット価格は3月9日に100万BTU(英国熱量単位)当たり24.8ドルと、紛争勃発前の約2倍に高騰した。 LNG価格の高騰が続けば、東京電力が提供する企業向け電気料金は4月にも値上げされる可能性が高い。経済産業省は3月10日、LNGの安定調達に向けた官民連絡会議を開催した。
こうした状況下で、エネルギー情勢の不安定化に直面しているのがJERAだ。東京電力と中部電力の火力・燃料調達事業を統合し、2015年に設立されたJERAは、日本のLNG総輸入量の約4割を取り扱う世界最大級のLNGバイヤーである。首都圏と中部エリアに電力を供給し、国内発電量の27%を占める国内最大の発電会社でもある。 JERAが世界規模でLNGを調達する背景には、国内発電量のうちLNGを燃料とするガス火力由来の電力が3割超を占めることがある。特に、福島第一原発事故の影響で原発再稼働が遅れている首都圏では、ガス火力への依存度が高まっている。
JERAは、規模を活かしながらLNGの安定調達とエネルギー安全保障の確立を目指し、関連事業の拡大を図っている。しかし、購入先の多様化だけではLNGの安定調達は容易ではない。地政学的リスクの高まりにより、エネルギー安全保障の確立は一層困難になっている。JERAは、こうした不確実性を軽減するための戦略を模索し続けている。
