人手不足深刻の日本、ロボット導入に拍車 経産省は2040年に「フィジカルAI」世界30%目標
日本の労働力不足が、ロボット導入の現場を一気に押し広げている。経済産業省は先月、実世界で動くロボットとAIを組み合わせた「フィジカルAI」の国内産業を育て、2040年までに世界市場の30%を確保したい考えを示した。狙いは物流倉庫や工場、データセンターなどでの導入を加速し、人が集まらない仕事の穴を埋めることだ。 背景には急速な人口動態の変化がある。2024年の日本の総人口は14年連続で減少。今後20年で生産年齢人口が約1500万人縮小すると見込まれている。2024年のロイター/日経の調査でも、労働力不足が日本企業の自動化やAI導入を後押しする主因だと示された。高齢化対応でもロボットへの期待は大きく、在宅介護など国内のケア分野での活用が検討されている。最近のバンク・オブ・アメリカの報告書は、2060年までに人型ロボットの所有数が自動車を上回ると予測した。
運輸テックや実世界向け技術に特化する投資会社UP.Partnersのパートナー、アリー・ウォーソン氏は「現実として、誰もやりたがらない仕事がある」と強調する。産業分野では「約60万件ほどの欠員がある」とし、募集に手を挙げる人が少ない現状を指摘する。効率化やコスト削減よりも、同氏が重視するのは安全だ。たとえばトンネル工事では、危険にさらされる作業員の代わりにロボットに掘削を続けさせることができるし、超高所での窓清掃のような作業も本来は人が担うべきではないと語る。真夜中の建設現場や漏洩が発生した沖合の油ガス施設に人を向かわせるような場面では、100万ドル超の生命保険金請求や訴訟リスクが現実的にのしかかるため、ロボット化の経済合理性は高いという。 投資家サイドの機運も高まる。UBS Global Entrepreneur Report
2026は、売上合計343億ドルの企業を率いる215人の経営者を対象に調査し、産業関連の起業家の47%が自動化とロボットを最大の商機と見ていると報告した。UBSの研究者が話を聞いたルクセンブルクの建設・不動産企業の経営者は「建設は物理的なビジネスで、AIの用途は限られる。AIは壁を築けない。いつかロボットは来るが、まだだ」と述べた。ウォーソン氏も、ロボットは万能ではないとしつつ、生命の危険が伴う作業領域では導入の必然性が強いとみる。 UP.Partnersも資金を投じている。実際の建設現場の混沌に対応するよう設計された建設ロボット企業Noble
Machinesを支援し、階段の昇降や荷重下での安定、従来の産業用ロボットが不得手だった非構造環境での作業を可能にする機体の開発を後押ししている。また、建設現場の作業員をモニタリングするハード・ソフト一体のプラットフォームWakeCapにも出資。安全に関する観測事項の件数が91%減少したとされ、ヘルメットに組み込んだセンサーで作業の実時間データを取得し安全を高めているという。ウォーソン氏は「これは保険の考え方にも直結する。AIは人間の安全性を高める助けになる」と話す。 人口減と人手不足が続く限り、自動化の圧力は弱まらない。政府は2040年の数値目標を掲げており、どの現場でどのようにロボットが定着していくのか、その広がりと技術の成熟度が次の焦点となる。
